生成AI利活用計画書の提出が契約要件に。国土交通省が直轄の建設コンサル業務で義務化

2026年8月現在、公共調達における生成AIの扱いが変わりつつあります。国土交通省が直轄の建設コンサルタント業務で、受注者に「生成AI利活用計画書」の提出を求める方針を示しました。
この記事では、公表されている事実の範囲を確認したうえで、中堅の建設コンサルタント会社・建設会社が対応を検討する際の論点を整理します。
この記事の対象読者
- 国土交通省の直轄業務を受注している建設コンサルタント会社の経営者・役員
- 調査・設計部門を持ち、直轄業務の受注機会がある建設会社の管理職
- AI導入の社内検討を担う情報システム部門・DX推進担当者
- 今回の方針が自社の受注業務にどう影響するか把握したい経営企画担当者
何が起きたか
公表された方針
建通新聞と日本工業経済新聞社の報道によると、国土交通省は2026年度から、直轄の建設コンサルタント業務の特記仕様書に生成AIの「積極的な利活用を推進」する旨を明記します。
受注者は、生成AIの利用目的・用途・利用サービス名・利用範囲を記載した「生成AI利活用計画書」を作成し、発注者に提出します。目的や用途、利用範囲は受発注者の協議で定める考え方が示されています。
日経クロステックは、この運用が2026年5月以降、全国の直轄土木業務に広がると報じています。
提出のタイミング
計画書の提出は入札の段階ではありません。建通新聞によれば、受注者が契約後に業務計画書を作成する段階で、あわせて提出する運用です。
つまり、これは入札への参加資格ではなく、受注後に負う契約上の要求事項です。計画書の内容を総合評価方式で加点するという記述は、公表されている範囲にはありません。
根拠となる政策
背景にあるのが、国土交通省が2024年4月に策定した「i-Construction 2.0」です。2040年度までに建設現場の省人化を少なくとも3割、生産性を1.5倍にするという目標を掲げています。

ポイントと背景
生成AI活用が想定される業務

押さえておきたいのは、計画書に書く対象になりうる業務の幅です。私たちが建設分野の支援で見てきた範囲では、生成AIの適用余地が大きいのは次の領域です。
- 設計図書の解析・仕様確認:発注図書を読み込み、施工要件や数量を抽出する作業
- 施工計画書の作成支援:工程・安全・品質管理計画の初稿生成と整合確認
- 安全書類の生成:作業手順書・リスクアセスメント票など定型書類の作成
- 現場記録・報告書のまとめ:日報・写真整理・進捗レポートの効率化
受注前の準備から業務中の日常管理まで、対象になりうる場面は広く分布します。
問われるのは導入実績ではなく、業務適用と効果測定の設計です。
人口動態という必然
i-Construction 2.0が掲げる2040年度目標の背景には、建設分野の担い手不足があります。現場でうかがう課題も、ほぼ例外なく人手の確保に行き着きます。
省人化3割という数字を、私たちは「技術で補わなければ現場が回らない」という前提の表明だと読んでいます。
国土交通省「i-Construction 2.0」(2024年4月)が示す目標は次のとおりです。
| 政策 | 目標年度 | 数値目標 |
|---|---|---|
| i-Construction 2.0省人化 | 2040年度 | 建設現場の省人化3割 |
| i-Construction 2.0生産性 | 2040年度 | 生産性1.5倍 |
中堅企業への含意
準備状況の差
私たちが中堅の建設コンサルタント会社・建設会社と話してきた範囲では、「AI活用の検討はしているが、何から着手すべきか整理できていない」という声が目立ちます。ツールを触ったことはあっても、業務単位の適用設計まで踏み込めている会社は多くありません。
計画書に落とし込む四つの決定

公表されている記載事項は、利用目的・用途・利用サービス名・利用範囲です。これを社内で決めるには順番があります。私たちが実務で使っている順序は次の四つです。
- どの業務プロセスに適用するか決める:件数が多く、判断が定型的な業務から選ぶ
- どのAIツールを使うか決める:業務要件と情報の取り扱い条件から絞り込む
- どのような方法で使うか決める:入力する情報、人が確認する工程、記録の残し方を決める
- 効果をどう検証するか決める:処理時間や手戻り件数など、測れる指標を先に置く
自社開発にこだわる必要はありません。既存のツールを使いながら、社内の活用プロセスと効果測定の仕組みを整えるほうが現実的です。
経営層が技術導入の判断を現場任せにできなくなった。これが今回の変化について、私たちがいちばん重く見ている点です。

よくある質問
「生成AI利活用計画書」には何を書けばよいですか?
報道で示されている記載事項は、生成AIの利用目的・用途・利用サービス名・利用範囲です。国土交通省は、目的や用途、利用範囲を受発注者の協議で定める考え方を示しています。協議を前提に準備するのが実務的です。
抽象的な「AI活用方針」ではなく、業務単位で何にどう使うかを書ける状態にしておくと、協議が早く進みます。
義務化の対象はどの業務ですか?
対象として示されているのは、国土交通省の直轄の建設コンサルタント業務です。日経クロステックによれば、2026年5月以降に全国の直轄土木業務へ広がります。
都道府県・市町村が発注する業務は、各自治体の判断によります。まずは自社の受注に占める国直轄業務の割合を確認することが、優先度判断の起点になります。
AI活用の実績がない会社はどうすればよいですか?
まず一つの業務(たとえば定型書類の作成)を選び、既存のAIツールで試験運用を始めることが現実的な第一歩です。
実績ゼロから計画書を書こうとすると、書ける内容が抽象論にとどまります。小さな適用事例を積み上げながら計画書の精度を上げていくほうが、短期間で対応力がつきます。
計画書を提出すれば加点されますか?
加点評価の仕組みは示されていません。計画書は受注後に提出する契約上の義務であり、入札での評価項目ではありません。
そのため、対応の目的は「点を取ること」ではなく、契約上の要求を満たし、業務の中で実際に使える状態をつくることになります。
どのAIツールを使えばよいですか?
特定ツールの指定はありません。建設分野に特化したツールから、汎用の大規模言語モデルを業務フローに組み込む構成まで、選択肢は複数あります。
選定の判断軸は二つです。「計画書に書ける形で利用目的と利用範囲を説明できるか」「効果測定のデータを取り出せるか」を確認しましょう。
ツールの機能よりも、計画書に落とし込める透明性を優先して選ぶ視点が実務では重要になります。
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参考・出典
国土交通省が示した生成AI利活用計画書の提出義務は、建設コンサルタント業務のAI対応を契約上の要求事項へ引き上げる変化です。対応には、ツールの選定だけでなく業務への適用設計と効果測定の仕組みが必要になります。早く始めた会社ほど、実績を積みながら計画書の精度を上げられます。
今日からの第一歩として、まず自社の受注に占める国直轄業務の割合を確認してください。そのうえで、定型書類の作成など一つの業務を選び、既存ツールでの試験運用を始めるのがおすすめです。
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