AI研修・AI導入に使える補助金・助成金まとめ【2026年度最新版】

この記事の対象読者
- 社内のAI研修を任されたが、費用の出どころで止まっている方
- AI研修に助成金が使えると聞いたが、どの制度か分からない方
- 補助金と助成金の違いがあいまいなまま検討している方
- 経理や人事ではなく、現場側で研修の企画を任されている方
制度の名前を並べるだけの記事は多くあります。この記事では、どの費用にどの制度が使えるのか、どこで落ちるのかまで書きます。数値はすべて公的機関の資料から取っています。
結論:使える制度は大きく2系統ある
AIまわりで使える公的なお金は、目的によって2つに分かれます。混同すると申請そのものが通りません。
| 人材開発支援助成金 | デジタル化・AI導入補助金2026 | |
|---|---|---|
| 所管 | 厚生労働省 | 中小企業庁 |
| 何に使えるか | 人を育てる費用(研修) | ITツールの導入費用 |
| 性格 | 要件を満たせば原則支給 | 審査があり採択されないことがある |
| AI研修の費用 | 対象になる | 単独では対象外。導入するソフトの使い方研修は対象 |
| AIツールの導入費 | 対象にならない | 対象になる |
| 原資 | 雇用保険 | 国の予算 |
つまり、社員にAIを教える費用は人材開発支援助成金、AIツールを買う費用はデジタル化・AI導入補助金です。研修を検討している方が最初に見るべきは前者になります。
数字まで含めて1枚にすると、次のようになります。
| 人材開発支援助成金 | デジタル化・AI導入補助金2026 | |
|---|---|---|
| 何に使えるか | 社員へのAI研修の費用 | AIツールなどITツールの導入費用 |
| 助成率・補助率 | 経費助成は中小企業75%、大企業60%(事業展開等リスキリング支援コース) | 通常枠で1/2以内 |
| 上限 | 1事業所1年度あたり1億円 | 通常枠で450万円以下 |
| 審査の有無 | なし。要件を満たせば原則支給 | あり。採択されないことがある |
前提:雇用保険の適用事業所であること
人材開発支援助成金の原資は、国の一般予算ではなく雇用保険です。事業主が納めた保険料が元になっています。
そのため、雇用保険の適用事業所であることが出発点になります。対象になるのも雇用保険の被保険者です。

人材開発支援助成金には複数のコースがある
ここが最初のつまずきどころです。人材開発支援助成金という1つの制度があるのではなく、その中に目的別のコースが置かれています。
AI研修で候補になるのは次の2つです。助成率も要件も提出書類も違うため、どちらを使うかを先に決める必要があります。
| 事業展開等リスキリング支援コース | 人への投資促進コース | |
|---|---|---|
| 経費助成率(中小) | 75% | メニューにより45%から75% |
| 賃金助成(中小) | 1人1時間1,000円 | メニューによる。定額制訓練はなし |
| 1事業所1年度の限度額 | 1億円 | 2,500万円(成長分野等人材訓練は1,000万円) |
| 訓練時間の要件 | 10時間以上 | 定額制訓練は合計10時間以上 |
| 特有の要件 | 事業展開またはデジタル化に伴う訓練であること | メニューごとに要件が異なる |
| 追加で必要な書類 | 事業展開等実施計画(様式第1-3号) | コース共通の書類のみ |
| 期間 | 資料に記載なし | 令和4年度から令和8年度までの期間限定 |
研修の内容からどのコースかを見る
実際の研修内容から逆算すると、次のように整理できます。コースやメニューの詳しい要件は、この後それぞれの節で説明します。
| やろうとしている研修 | 候補になるコース・メニュー | 経費助成率(中小) |
|---|---|---|
| 社内のデジタル化のために集合形式でAIの業務活用を教える | 事業展開等リスキリング支援コース | 75% |
| 新規事業の立ち上げに向けてAI人材を育てる | 事業展開等リスキリング支援コース | 75% |
| オンライン講座を年間契約して社員に開放する | 人への投資促進コースの定額制訓練 | 60% |
| ITSSレベル4または3の資格取得を目指す訓練 | 人への投資促進コースの高度デジタル人材訓練 | 75% |
| 未経験の社員をAI担当として実務と並行して育てる | 人への投資促進コースの情報技術分野認定実習併用職業訓練 | 60% |
| 社員が自分で申し込んだ講座の費用を会社が出す | 人への投資促進コースの自発的職業能力開発訓練 | 45% |
令和8年度で終わる制度があります
コースを選ぶときは、使える期間も見ておく必要があります。
人への投資促進コースは、令和4年度から令和8年度までの期間限定で設けられたコースです。令和9年度以降どうなるかは、現時点では決まっていません。
来年度も同じ内容で使える前提で計画を立てると、想定が外れることがあります。
コース1:事業展開等リスキリング支援コース
新たな事業の立ち上げなどに伴って必要になる知識や技術を身につけるための訓練を対象にしたコースです。経費助成率が中小企業で75%と高く、AI研修ではこちらが候補になることが多くなります。
中小企業に当たるかの判定
助成率も限度額も、中小企業かどうかで変わります。判定は業種ごとに決まっていて、資本金か従業員数のどちらか一方を満たせば中小企業です。
| 主たる事業 | 資本金の額または出資の総額 | 企業全体で常時雇用する労働者の数 |
|---|---|---|
| 小売業(飲食店を含む) | 5,000万円以下 | 50人以下 |
| サービス業 | 5,000万円以下 | 100人以下 |
| 卸売業 | 1億円以下 | 100人以下 |
| その他の業種 | 3億円以下 | 300人以下 |
主たる事業は総務省の日本標準産業分類にもとづいて判定します。旅館業などの宿泊業と情報サービス業はサービス業に含まれます。ただし旅行業はサービス業から除かれ、その他の業種になります。
助成率と限度額
| 項目 | 中小企業 | 大企業 |
|---|---|---|
| 経費助成率 | 75% | 60% |
| 賃金助成額(1人1時間) | 1,000円 | 500円 |
| 1事業所1年度あたりの助成限度額 | 1億円 | 1億円 |
受講者1人あたりの経費助成には、訓練時間に応じた上限があります。
| 実訓練時間数 | 中小企業 | 大企業 |
|---|---|---|
| 10時間以上100時間未満 | 30万円 | 20万円 |
| 100時間以上200時間未満 | 40万円 | 25万円 |
| 200時間以上 | 50万円 | 30万円 |
支給の対象になる訓練

資料に書かれている条件は次の3つです。
- 訓練時間数が10時間以上であること
- OFF-JT(企業の事業活動と区別して行われる訓練)であること
- 職務に関連した訓練で、事業展開に伴う新分野の訓練か、デジタル化やグリーン化に関連する訓練のいずれかであること
3つ目については、事業展開を行う場合と行わない場合の2通りが用意されています。事業展開をしない企業でも、社内のデジタル化を進めるために必要な訓練であれば対象になります。AI研修はここに当てはまるケースが多くなります。
| 区分 | 資料の記載 |
|---|---|
| 事業展開を行う場合 | 企業において事業展開を行うにあたり、新たな分野で必要となる専門的な知識および技能の習得をさせるための訓練 |
| 事業展開を行わない場合 | 事業主において企業内のデジタル化やデジタルトランスフォーメーション化、グリーン化やカーボンニュートラル化を進めるにあたり、これに関連する業務に従事させる上で必要となる専門的な知識および技能の習得をさせるための訓練 |
| 人事および人材育成の計画にもとづく場合 | 企業内の人事および人材育成に関する計画にもとづき、今後従事することが予定される職務に必要となる専門的な知識および技能の習得をさせるための訓練 |
事業展開の例として、資料には新商品や新サービスの開発、製造、提供、販売を開始することが挙げられています。デジタル化の例としては、ITツールの活用や電子契約システムの導入によるペーパーレス化が挙げられています。
このコース特有の提出書類
職業訓練実施計画届に加えて、事業展開などの内容を記載した事業展開等実施計画(様式第1-3号)を併せて提出する必要があります。ほかのコースにはない書類です。
取り組みの内容を具体的に書く必要があります。社内で何をやろうとしているのかを先に整理しないと、計画の作成でつまずきます。
設備投資加算という上乗せがあります
賃金要件または資格等手当要件のいずれかを満たす必要があります。そのうえで事業展開促進機器等を導入した場合、通常分とは別に上乗せを申請できます。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 助成率 | 中小企業のみ。導入費用の50% |
| 限度額 | 支給対象労働者1人につき15万円 |
| 10人以上の場合 | 人数にかかわらず150万円 |
厚生労働省が示している計算例
資料には活用例が1件だけ載っています。ドローン測量の研修です。AI研修そのものの例ではありませんが、助成額の出し方は同じです。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 課題 | これまでは人手中心の測量作業を行っていたが、今後ドローンを活用した測量手法を導入し、業務のDX化を進めていきたい |
| 訓練コース | ドローン測量プロフェッショナル育成コース |
| 訓練内容 | ドローンでの測量に必要な知識の習得、測量飛行の演習 |
| 訓練時間 | 30時間(7.5時間×4日間) |
| 訓練経費 | 30万円/1人。3人受講で90万円 |
| 経費助成 | 67.5万円(30万円×75%×3人) |
| 賃金助成 | 9万円(30時間×1,000円×3人) |
| 設備投資加算 | 40万円(80万円×50%) |
訓練経費90万円のうち67.5万円が経費助成の対象です。訓練経費の自己負担は22.5万円になります。これとは別枠で、訓練中の賃金に対して9万円、機器の導入に対して40万円が支給されます。

コース2:人への投資促進コース
令和4年度から令和8年度までの期間限定で設けられているコースです。5つのメニューがあり、研修の形によって使うものが変わります。
メニューごとの助成率
資料に記載されている助成率と助成額です。カッコ内は、賃金要件または資格等手当要件を満たした場合に上乗せされる分です。
| メニュー | 経費助成(中小) | 経費助成(大企業) | 賃金助成額(中小) |
|---|---|---|---|
| 定額制訓練 | 60%(+15%) | 45%(+15%) | なし |
| 高度デジタル人材訓練 | 75% | 60% | 1時間1,000円 |
| 成長分野等人材訓練 | 75% | 75% | 国内大学院の場合1時間1,000円 |
| 情報技術分野認定実習併用職業訓練 | 60%(+15%) | 45%(+15%) | 1時間760円(+200円) |
| 自発的職業能力開発訓練 | 45%(+15%) | なし | なし |
| 長期教育訓練休暇等制度 | 定額20万円(+4万円) | 同左 | 1日6,000円(+1,200円、有給休暇の場合) |
受講者1人あたりの限度額
メニューごとに、受講者1人あたりの経費助成にも上限があります。経費助成の額は、実訓練時間数が100時間未満、100時間から200時間未満、200時間以上のどれに当たるかで変わります。
| メニュー | 経費助成の限度額(中小) | 賃金助成の上限(時間・日数) | 受講回数(1年度) |
|---|---|---|---|
| 定額制訓練 | 上限の設定なし | なし | 記載なし |
| 高度デジタル人材訓練 | 30万円から50万円(大学院は150万円) | 原則1,200時間 | 3回まで |
| 成長分野等人材訓練 | 国内150万円(海外500万円) | 原則1,200時間 | 3回まで |
| 自発的職業能力開発訓練 | 7万円から20万円(大学60万円) | なし | 3回まで |
| 情報技術分野認定実習併用職業訓練 | 15万円から50万円 | 1,200時間 | 1回まで |
| 長期教育訓練休暇等制度 | 1事業主1回まで(定額) | 最大150日 | 記載なし |
メニュー1:定額制訓練
オンラインの定額受け放題型、いわゆるサブスクリプション型の研修サービスを使う場合が、これにあたります。
経費助成は中小企業で60%です。受講者1人あたりの上限がなく、1事業所1年度あたり2,500万円が限度額になります。
助成の対象になるのは基本料金だけではありません。アカウント料、初期設定費用、管理者ID付与料金などのオプション経費も対象になると資料に書かれています。
| 要件 | 内容 |
|---|---|
| 実施のしかた | 業務上義務付けられ、労働時間に実施される訓練であること。所定労働時間外に行う場合は賃金の支払いが必要 |
| 訓練の種類 | OFF-JTであって事業外訓練であること。申請する事業主以外が実施するサービスを使う必要がある |
| 時間数 | 支給対象労働者の受講時間数の合計が、支給申請時において10時間以上であること |
資料には活用例も載っています。年間利用料200万円のeラーニングを導入した場合、中小企業なら経費助成60%で120万円という計算です。
メニュー2:高度デジタル人材訓練・成長分野等人材訓練
経費助成が中小企業で75%と、5つの中で最も高い区分です。加えて訓練を受けている時間の賃金も1時間あたり1,000円が助成されます。
対象になるのは、ITSS(ITスキル標準)のレベル4またはレベル3に相当する訓練です。海外を含む大学院での訓練も75%の対象になります。
資料には活用例が載っています。情報処理安全確保支援士や応用情報技術者の講座を社員に受講させたケースです。資格試験の費用も助成対象になっています。高度デジタル人材訓練では、自社専用のカリキュラムを大学に委託して開発した場合、その開発や設定の費用も対象になります。
メニュー3:情報技術分野認定実習併用職業訓練
IT分野が未経験の正社員を即戦力にするための訓練です。座学(OFF-JT)と実務での訓練(OJT)を組み合わせる形が条件になります。
経費助成は中小企業で60%、賃金助成は1時間あたり760円です。これに加えて、OJTを実施したことに対する助成が中小企業で20万円あります。
ここからの2つは、AI研修の費用を直接まかなう使い方とは少し離れます。会社が命じておこなう研修を探している方は、読み飛ばしても差し支えありません。
メニュー4:自発的職業能力開発訓練
社員が自分で選んで受けた訓練の費用を、会社が負担した場合に助成されるものです。経費助成は45%で、賃金助成はありません。
1事業所1年度あたりの限度額2,500万円のうち、このメニューに使えるのは300万円までとされています。
メニュー5:長期教育訓練休暇等制度
研修そのものではなく、働きながら学ぶための休暇制度や勤務時間の短縮制度を導入した場合の助成です。
30日以上の連続した休暇を取得できる制度を入れた場合は定額20万円です。有給休暇の場合は1人1日あたり6,000円が助成されます。所定労働時間の短縮や所定外労働の免除の制度を入れた場合も定額20万円です。

制度2:デジタル化・AI導入補助金2026はツールが対象
令和7年度の補正予算から、IT導入補助金がデジタル化・AI導入補助金という名称に変わりました。中小企業や小規模事業者がITツールを導入する際の経費を補助する制度です。
AIの使い方を広く学ぶ研修そのものは対象になりません。ただし導入するソフトウェアに紐づく使い方の研修は対象になります。導入関連費のカテゴリー6(導入設定・マニュアル作成・導入研修)にあたります。公募要領では、登録されたソフトウェアと対になる役務を導入する場合に限り申請できると定められています。
申請枠と対象になる経費
申請枠は4つで、そのうちインボイス枠は2つの類型に分かれます。枠によって対象になる経費が違うため、どの枠で申請するかで買えるものが変わります。
| 申請枠 | 対象になる主な経費 |
|---|---|
| 通常枠 | ソフトウェア購入費、クラウド利用料(最大2年分)、導入関連費 |
| インボイス枠(インボイス対応類型) | 通常枠と同じ範囲。単独で申請できるツールが広い |
| インボイス枠(電子取引類型) | クラウド利用料(最大2年分) |
| セキュリティ対策推進枠 | サイバーセキュリティお助け隊サービス利用料(最大2年分)、ハードウェア購入費 |
| 複数者連携デジタル化・AI導入枠 | クラウド利用料(最大2年分) |
通常枠の補助額と補助率は次のとおりです。
| 区分 | 補助額 | 補助率 |
|---|---|---|
| 1プロセス以上 | 5万円から150万円未満 | 1/2以内 |
| 4プロセス以上 | 150万円から450万円以下 | 1/2以内 |
最低賃金近傍の事業者は、補助率が2/3以内になります。150万円以上を申請する場合は賃上げ計画が必須です。1人あたりの給与支給総額を年平均3%以上引き上げ、事業場内最低賃金を地域別最低賃金より30円以上高い水準にすることが求められます。150万円未満では最低賃金の定めは申請要件になく、30円以上は加点です。150万円以上で50円以上にすると加点されます。
通常枠以外の枠では、補助率と補助上限額が変わります。年度ごとに改定されるため、金額は公式サイトの最新の公募要領でご確認ください。
どちらを使うか:判断の順序
2つの制度は併用を検討できますが、対象になる費用が違うので、まず何にお金がかかるのかを分けて考えます。
| やりたいこと | 使う制度 |
|---|---|
| 社員にAIの使い方を教えたい | 人材開発支援助成金 |
| AIツールを買って業務に入れたい | デジタル化・AI導入補助金2026 |
| ツールを入れて、その使い方も教えたい | 両方を別々に検討する |
研修から始める場合、動くべきは人材開発支援助成金です。ツールの導入が先にある場合は補助金を見ますが、採択されない可能性を織り込む必要があります。
申請できるかの自己チェック

細かい要件に入る前に、大きく外れていないかを確かめます。次の6つに当てはまるかを見てください。
- 雇用保険の適用事業所である
- 受講する方が雇用保険の被保険者である(役員は原則として対象外)
- 訓練時間が合計10時間以上ある
- 事業展開に伴う訓練、または社内のデジタル化に伴う訓練である
- 計画を訓練開始日の1か月前までに提出できる日程になっている(定額制サービスによる訓練なら、契約期間の初日の1か月前まで)
- 訓練経費を支給申請までに全額支払える
6つすべてに当てはまるなら、事業展開等リスキリング支援コースの候補になります。外れるものがあれば、そこが最初に手を打つ場所です。
対象になるケースとならないケース
実際に相談を受けていて、判断が分かれやすいところを整理します。
| ケース | 判定 | 理由 |
|---|---|---|
| 社内のデジタル化のためにChatGPTの業務活用研修をおこなう | 対象になりうる | デジタル化を進めるうえで必要な知識にあたるため |
| 役員だけを対象にした勉強会 | 対象外の可能性 | 雇用保険の被保険者が対象。役員は原則として対象外 |
| 訓練開始後に計画を出した | 対象外 | 計画は訓練開始の1か月前までに提出する必要がある |
| 業務と関係のない一般教養のAI講座 | 対象外 | 職務に関連した訓練であることが要件 |
| 合計8時間の短い研修 | 対象外の可能性 | 訓練時間が10時間以上であることが要件 |
| 社内の講師が教える研修 | 要確認 | 定額制訓練は事業外訓練であることが要件。ほかのコースも個別の確認が必要 |
| 訓練費用を後払いにしたまま支給申請 | 対象外 | 支給申請までに経費を全額支払っている必要がある |

申請の流れと期限
手続きは、訓練開始日から逆算すると分かりやすくなります。期限は決まっていて、後から遡ることはできません。定額制サービス(サブスク型)による訓練の場合は、訓練開始日ではなく契約期間の初日から逆算してください。
| 訓練開始日からの逆算(定額制サービスは契約期間の初日から) | やること | 提出先・注意点 |
|---|---|---|
| 6か月前 | 計画を提出できる期間が始まる | これより前には提出できません |
| 3か月前(目安) | 職業能力開発推進者を選び、事業内職業能力開発計画を作って社内に周知する | 社内の準備。未着手だと日程が後ろにずれます |
| 1か月前 | 職業訓練実施計画届と訓練別の対象者一覧を提出する | 管轄の労働局へ。ここが締切で、過ぎると申請できません |
| 訓練開始日から修了日 | 計画にもとづいて訓練をおこなう。支給申請までに経費を全額支払う | 計画どおりに実施する |
| 修了日の翌日から2か月以内 | 支給申請書、助成額を算定した書類、OFF-JT実施状況報告書などを提出する | 管轄の労働局へ。ここも締切です |
事業展開等リスキリング支援コースを使う場合は、これに加えて事業展開等実施計画(様式第1-3号)の提出が必要です。
添付する書類
計画提出のときと支給申請のときで、必要になる書類が違います。
| 段階 | 添付書類 |
|---|---|
| 計画提出 | 訓練内容を確認できるカリキュラム、訓練期間中の労働条件がわかるもの(雇用契約書の写しなど) |
| 支給申請 | 出勤簿、タイムカード、賃金台帳の写し、事業主が訓練費用を負担したことを確認できる振込通知書、訓練に使用した教材の目次などの写し、受講を修了したことを証明する書類(修了証など) |
研修を提供する側から出せる書類と、社内で用意する書類が分かれます。カリキュラムや修了証は研修提供側、出勤簿や賃金台帳は社内です。

よくある落とし穴
1. どのコースを使うかを決めないまま進める
人材開発支援助成金には複数のコースがあり、助成率も要件も提出書類も違います。まずどのコースで申請するかを決めてください。決めないまま研修の内容を固めると、後から要件に合わないことが分かります。
2. 計画を出す前に研修を始めてしまう
制度は事前に計画を出すことを前提にしています。始めてしまった訓練を後から申請することはできません。
3. 訓練時間が10時間に足りない
事業展開等リスキリング支援コースと、人への投資促進コースの定額制訓練は10時間以上が要件です。1回2時間の研修を4回では届きません。定額制訓練の場合は、実際の視聴時間ではなく標準学習時間で数えます。
4. 対象にならない人を数えてしまう
対象は雇用保険の被保険者です。役員や、雇用保険に入っていない働き方の方は原則として含まれません。人数を数えるときは在籍者数ではなく被保険者数で見てください。
5. 支払いが終わっていない
支給申請までに、訓練にかかった経費を全額支払っている必要があります。分割払いや後払いの契約にしていると、申請の時点で条件を満たさないことがあります。
6. 助成金が入るまでの資金を見ていない
助成金は後払いです。まず自社で支払い、あとから入ってきます。手元の資金計画に織り込んでおかないと、金額が大きいほど負担になります。
7. 支給が確約だと思ってしまう
計画が受理されたことと、支給が決まったことは別です。要件を満たしていなければ不支給になります。制度を使う前提で予算を組む場合は、この点を関係者に共有しておいてください。
自社の費用を試算する手順
制度の説明を読んでも、自社でいくらになるかが分からないままだと動けません。次の順で数字を置いていくと出ます。
手順1:どのコースかを決める
社内のデジタル化のための研修なら、事業展開等リスキリング支援コースが候補です。サブスク型のサービスを使うなら、人への投資促進コースの定額制訓練になります。助成率がここで決まります。
手順2:対象になる人数を数える
在籍者数ではなく、雇用保険の被保険者数で数えます。役員は原則として含まれません。ここを間違えると試算が全部ずれます。
手順3:訓練の時間数を出す
1回あたりの時間と回数をかけます。10時間以上でなければ対象になりません。賃金助成はこの時間数に対して計算されます。
手順4:1人あたりの上限に当たっていないか確認する
経費助成には受講者1人あたりの上限があります。事業展開等リスキリング支援コースなら、10時間以上100時間未満で中小企業30万円です。助成率をかけた額がこの上限を超える場合、超えた分は対象になりません。
手順5:経費助成と賃金助成を別々に計算する
経費助成は、訓練経費に助成率をかけます。賃金助成は、訓練時間に1時間あたりの助成額と人数をかけます。この2つを足したものが助成の総額です。
| 項目 | 計算式 | 試算例(当社作成) |
|---|---|---|
| 訓練経費の総額 | 1人あたり経費 × 人数 | 25万円 × 4人 = 100万円 |
| 経費助成 | 訓練経費の総額 × 助成率 | 100万円 × 75% = 75万円 |
| 1人あたりの上限確認 | 1人あたり助成額と上限を比較 | 18万7,500円は上限30万円の範囲内 |
| 賃金助成 | 訓練時間 × 1時間の助成額 × 人数 | 30時間 × 1,000円 × 4人 = 12万円 |
| 助成の総額 | 経費助成 + 賃金助成 | 87万円 |
| 実質の負担 | 訓練経費 - 助成の総額 | 13万円 |
この試算はあくまで目安です。要件を満たしているかどうかで結果は変わります。ただし桁が見えるだけでも、社内の話は進みやすくなります。
規模別の試算3パターン
人数と訓練時間を変えると金額がどう動くか、3つの例で示します。いずれも事業展開等リスキリング支援コースを使った場合の試算です。
| 想定 | 対象人数 | 訓練時間 | 訓練経費 | 経費助成 | 賃金助成 | 助成の合計 | 実質負担 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 中小企業 | 10名 | 15時間 | 100万円(1人10万円) | 75万円 | 15万円 | 90万円 | 10万円 |
| 中小企業 | 30名 | 20時間 | 240万円(1人8万円) | 180万円 | 60万円 | 240万円 | 0円 |
| 大企業 | 50名 | 15時間 | 400万円(1人8万円) | 240万円 | 37万5,000円 | 277万5,000円 | 122万5,000円 |
経費助成は、1人あたりの経費に助成率をかけた額と1人あたりの限度額を比べ、小さいほうを人数分足します。賃金助成は、訓練時間に1時間あたりの助成額と人数をかけます。
この3例の1人あたり経費助成は、順に7万5,000円、6万円、4万8,000円です。訓練時間はいずれも10時間以上100時間未満のため、限度額(中小企業30万円、大企業20万円)には当たりません。
社内で誰を巻き込むか
手続きには、研修の企画担当だけでは用意できない書類が含まれます。早めに声をかけておくと止まりません。
| 役割 | お願いすること | いつ |
|---|---|---|
| 人事・労務 | 雇用保険の被保険者の確認、雇用契約書の写し、出勤簿や賃金台帳 | 計画提出の前と支給申請のとき |
| 経理 | 訓練費用の支払いと振込通知書の保管、助成金が入るまでの資金の見通し | 支払いのとき |
| 現場の責任者 | 誰を受講させるか、業務との調整 | 計画を作るとき |
| 経営層 | 事業内職業能力開発計画の承認、職業能力開発推進者の選任 | いちばん最初 |
研修が実際にどう変わったか
制度の話だけでは、研修そのものの中身が見えません。当社でおこなった研修から2件をご紹介します。いずれもお客様から共有いただいた結果であり、公的な調査によるものではありません。
マーケティング会社:クリエイティブチームのAI活用研修
すでにAIを使ってはいたものの、出力の質が安定しないという課題がありました。研修を通じて出力の精度が上がり、業務でAIを使う社員の割合が40%から95%になったとご報告いただいています。
残りの5%については、そもそもクリエイティブ領域でAIを使う必要がなかった業務でした。全員に使わせることが目的ではないという整理も、研修の中でおこなっています。
不動産の営業部門:資料作成のためのAI研修
AIに苦手意識を持つ方が多い環境でした。設定のしかたから始めました。ChatGPTやGeminiを使った情報収集と調査、その情報を資料に落とし込むところまでを3か月かけて研修しました。
結果として資料作成の作業時間が大きく減り、営業社員の負担が半分以上軽くなったとご評価いただいています。
制度が使えない場合はどうするか
要件に合わない、日程が間に合わないという場合もあります。そのときは、研修の規模を先に小さくする方法があります。
- 対象をまず1部門に絞り、費用そのものを下げる
- 次年度の計画に載せることを前提に、今期は準備だけ進める
- 月額の顧問契約のように、単発の研修ではない形に切り替える
制度に合わせて研修を作ると、目的がずれることがあります。順番としては、やりたい研修を決めてから、それが制度に乗るかを見るほうが失敗しません。
自治体独自の制度もあります
国の制度のほかに、都道府県や市区町村が独自にデジタル化や人材育成の助成をおこなっている場合があります。金額も条件も自治体によって違うため、所在地の産業振興の窓口や労働局で確認するのが確実です。
国の制度と自治体の制度で、同じ費用を二重に受け取ることはできません。どちらが有利かを比べたうえで選ぶことになります。
申請の代行はできません
この点は誤解が多いので、はっきり書いておきます。
助成金の申請は、事業主本人がおこなうか、社会保険労務士が代理でおこなうものです。研修を提供する会社が代行することは、制度の決まりとしてできません。代行しますとうたっている場合は、内容をよく確認してください。
研修を提供する側にできるのは、手続きの支援までです。具体的には次のとおりです。訓練内容が要件に合うかの整理、カリキュラムなど研修側が出す書類の用意、進め方や期限のご案内です。
よくある質問
個人事業主でも使えますか
この助成金は雇用保険を原資としています。雇用保険の適用事業所であることと、対象になる方が雇用保険の被保険者であることが前提です。個人事業主の方は、この2点を満たすかどうかで判断が分かれます。ご自身の状況での可否は、管轄の労働局にご確認ください。
大企業でも使えますか
使えます。ただし助成率と助成額は中小企業より下がります。事業展開等リスキリング支援コースの場合、経費助成率は中小企業75%に対して大企業60%です。賃金助成は1人1時間あたり中小企業1,000円に対して大企業500円になります。1人あたりの経費助成限度額も、10時間以上100時間未満で中小企業30万円、大企業20万円と差があります。
複数のコースを同じ年度に併用できますか
コースごとに要件も限度額も別に定められています。実際に併用できるかは、訓練の内容と計画の分け方によって変わります。判断が分かれる部分なので、計画を出す前に管轄の労働局にご確認ください。
社内の講師が教える研修は対象になりますか
コースによって扱いが変わります。人への投資促進コースの定額制訓練は、申請する事業主以外が実施するサービスを使うことが要件です。社内の講師による研修は、この要件に当てはまりません。ほかのコースでの扱いは訓練の形によって変わるため、管轄の労働局にご確認ください。
研修を受ける社員は何人からですか
人数の下限は制度としてありません。1人からでも申請できます。ただし手続きの手間は人数に関わらずほぼ同じなので、対象になる方をまとめて計画に入れたほうが効率的です。
助成金はいつ入りますか
訓練修了日の翌日から2か月以内に支給申請をおこない、その後に審査を経て支給が決まります。申請してすぐ入るものではありません。
オンライン研修でも使えますか
使えます。ただしeラーニングや通信制、定額制サービスによる訓練は経費助成のみで、賃金助成は付きません。
訓練時間はどう数えますか
定額制訓練の場合は、実際に動画を視聴した時間ではなく標準学習時間で数えます。標準学習時間とは、その訓練を習得するために通常必要な時間として受講案内などで定められている時間のことです。
途中で受講できなくなった社員がいる場合はどうなりますか
計画と実績が違う場合は、実績にもとづいて申請することになります。出勤簿や受講記録が根拠になるため、記録は必ず残してください。
補助金と助成金は同時に使えますか
対象になる費用が違うので、それぞれ別の費用に対して使うことは検討できます。同じ費用に二重に受け取ることはできません。
まとめ:今日できること
AI研修の費用には人材開発支援助成金、AIツールの導入費用にはデジタル化・AI導入補助金。この2つを分けて考えるところから始まります。
人材開発支援助成金の中にも複数のコースがあります。社内のデジタル化のための研修なら、経費助成率が中小企業で75%の事業展開等リスキリング支援コースが候補です。
最大の関門は締切です。訓練開始の1か月前までに計画を出す必要があり、後から遡ることはできません。研修の日程が頭にあるなら、今日その日付から1か月以上前を確認してください。それが動き出す期限です。定額制サービス(サブスク型)を使う場合は、訓練開始日ではなく契約の初日が起点になります。契約を先に結ばないでください。
- 研修の実施日を、仮でよいので決める
- その日付の1か月前を確認する。それが計画提出の締切(定額制サービスを使うなら、契約開始日の1か月前)
- 対象になる方の人数を、在籍者数ではなく雇用保険の被保険者数で数える
制度が使えるかどうかの見立てだけでも、無料相談でお話しできます。研修の内容が要件に合うか、日程が間に合うかを一緒に確認しましょう。
参考・出典
本記事は公開時点で公開されている公的資料にもとづいています。制度の内容や金額は改正されることがあります。申請にあたっては、必ず管轄の労働局や公式サイトで最新の内容をご確認ください。支給を保証するものではありません。
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