AI導入の補助金・助成金で費用を抑えて生成AI活用する方法

この記事の対象読者
- AIツールの導入費用に補助金を使いたい方
- IT導入補助金という名前で調べたが、情報が古いのか新しいのか分からない方
- 補助額の上限だけ見て検討を進めている方
- 申請したあとに何を求められるのかを先に知っておきたい方
この記事の数値は、中小企業庁が令和8年4月に公表した概要資料と、事務局の公募要領(通常枠)から取っています。
結論:名前が変わりAIが正面から対象になりました
令和7年度の補正予算事業から、IT導入補助金はデジタル化・AI導入補助金2026という名称になりました。
正式名称は中小企業デジタル化・AI導入支援事業費補助金です。中小企業や小規模事業者が、AIを含むITツールを導入する費用を支援する制度です。
5つの枠を1枚にまとめました。まずここで当たりをつけてください。
| 枠 | 補助額と補助率 | 向いている場面 |
|---|---|---|
| 通常枠 | 5万円から450万円、原則1/2以内 | AIツールを入れて業務効率化やDXを進めたいとき |
| インボイス枠(インボイス対応類型) | 最大350万円、50万円以下は3/4以内、50万円超は2/3以内 | 会計・受発注・決済ソフトでインボイス制度に対応するとき |
| インボイス枠(電子取引類型) | 最大350万円、中小2/3以内、大企業1/2以内 | 発注側がツールを導入し取引先に無償で使わせるとき |
| セキュリティ対策推進枠 | 5万円から150万円、中小1/2以内、小規模事業者2/3以内 | サイバーセキュリティ対策を進めるとき |
| 複数者連携デジタル化・AI導入枠 | 基盤導入と消費動向分析で合わせて3,000万円、事務費と専門家費で200万円。補助率は基盤導入が1/2から4/5、他は2/3以内 | 10者以上が連携してツールを導入するとき |

枠は5つある
まずどの枠で申請するかを決めます。AI導入で中心になるのは通常枠です。
| 枠 | 何に使うか | 補助額 | 補助率 |
|---|---|---|---|
| 通常枠 | ITツールを導入して業務効率化やDXを進める | 5万円から450万円 | 原則1/2以内 |
| インボイス枠(インボイス対応類型) | 会計・受発注・決済ソフトでインボイス制度に対応 | 最大350万円 | 50万円以下は3/4以内(小規模事業者は4/5以内)。50万円超は2/3以内 |
| インボイス枠(電子取引類型) | 発注側がツールを導入し取引先に無償で使わせる | 最大350万円 | 中小2/3以内、大企業1/2以内 |
| セキュリティ対策推進枠 | サイバーセキュリティ対策を進める | 5万円から150万円 | 中小1/2以内、小規模事業者2/3以内 |
| 複数者連携デジタル化・AI導入枠 | 10者以上が連携してツールを導入 | 基盤導入と消費動向分析で合わせて3,000万円、事務費と専門家費で200万円 | 基盤導入は1/2から4/5、消費動向分析と事務費は2/3以内 |
通常枠は1法人につき1申請までです。ただしインボイス枠とセキュリティ対策推進枠は同時期に併願できます。
通常枠の補助額はプロセス数で決まる
補助額の幅は、導入するソフトウェアが業務プロセスをいくつ担うかで変わります。
| プロセス数 | 補助額 | 補助率 | 賃上げ目標の扱い |
|---|---|---|---|
| 1つ以上 | 5万円から150万円未満 | 1/2以内 | 加点項目(過去に交付決定を受けた事業者は必須) |
| 4つ以上 | 150万円から450万円以下 | 1/2以内 | 必須 |
プロセスとは、会計、受発注、決済、人事、在庫管理といった業務の区分です。1つの製品が複数のプロセスを担うこともあります。
補助率が2/3になる条件

最低賃金の近くで人を雇っている事業者は、補助率が2/3以内に上がります。
条件は令和6年10月から令和7年9月までの期間で判定します。
- その期間の地域別最低賃金以上、令和7年度改定の地域別最低賃金未満で雇用していること
- そこに当てはまる従業員が全従業員の30%以上であること
- その状態の月が3か月以上あること
実質いくら負担するか

補助率1/2は、対象経費の半分が戻るという意味です。
対象経費300万円で補助率1/2の場合を例にします。
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 対象経費 | 300万円 |
| 補助額 | 150万円 |
| 実質負担 | 150万円 |
| 交付までに立て替える額 | 300万円 |
補助額150万円は、プロセス4つ以上の区分にあたります。この区分では賃上げ計画が必須です。
研修費が対象になる条件
ここは誤解が多いところです。
AIの使い方を広く学ぶ研修は、この補助金の対象になりません。人を育てる費用は厚生労働省の助成金の領域です。
ただし導入するソフトウェアに紐づく使い方の研修は、導入関連費として対象になります。
| カテゴリー | 内容 | 条件 |
|---|---|---|
| カテゴリー5 | 導入コンサルティング、活用コンサルティング | 役務全体で200万円が上限 |
| カテゴリー6 | 導入設定、マニュアル作成、導入研修 | 登録済みソフトウェアと対になる役務のみ |
| カテゴリー7 | 保守サポート | 同上。最大2年分。1申請につき1つのみ |
つまり、AIツールを買うときにその使い方の研修をセットで頼めば、研修費も補助の対象に入ります。

補助対象になる経費

はじめに、入れたいツールが登録されているかを確かめます。
- 事務局の公式サイトでITツールを検索する
- 製品名または分野で探し、登録されているかを見る
- 見つからないときは、その製品を扱う事業者に登録の予定を尋ねる
登録されていれば、次の費用が補助の対象になります。
- ソフトウェア購入費
- クラウド利用料(最大2年分)
- オプション費用。機能拡張、データ連携ツールの導入、セキュリティ対策
- 役務費用。導入と活用のコンサルティング、導入設定、マニュアル作成、導入研修、保守サポート
対象にならないものも決まっています。中古品と、交付決定より前に購入したツールは対象外です。
パソコンやタブレットの扱い
通常枠では、パソコンやタブレットなどの機器は補助の対象になりません。
対象になるのはインボイス枠(インボイス対応類型)です。上限と補助率は次のとおりです。
| 機器 | 補助上限 | 補助率 |
|---|---|---|
| パソコン、タブレット等 | 10万円 | 1/2以内 |
| レジ、券売機等 | 20万円 | 1/2以内 |
通常枠で申請する場合、機器の費用は自己負担になります。ここを見落とすと予算が合わなくなります。
自社が対象になるか
業種ごとに、資本金または従業員数の上限が決まっています。どちらかを満たせば対象です。
| 業種 | 資本金 | 従業員数 |
|---|---|---|
| 製造業、建設業、運輸業 | 3億円以下 | 300人以下 |
| 卸売業 | 1億円以下 | 100人以下 |
| サービス業 | 5千万円以下 | 100人以下 |
| 小売業 | 5千万円以下 | 50人以下 |
| ゴム製品製造業(自動車・航空機用タイヤ等を除く) | 3億円以下 | 900人以下 |
| ソフトウェア業、情報処理サービス業 | 3億円以下 | 300人以下 |
| 旅館業 | 5千万円以下 | 200人以下 |
| その他の業種 | 3億円以下 | 300人以下 |
医療法人、社会福祉法人、学校法人は従業員300人以下、商工会と商工会議所は100人以下です。特定非営利活動法人も対象に含まれます。
個人事業主の場合
法人でなければ使えない制度ではありません。
中小企業庁の資料では、業種ごとの規模要件に個人事業主が明記されています。会社を設立していなくても、要件を満たせば対象です。
申請できるかの自己チェック

申請の前に、次の5点を確認してください。
- 業種ごとの資本金または従業員数の要件を満たしている
- GビズIDプライムを取得している。まだなら発行までの日数を見込んでいる
- 過去にIT導入補助金の交付決定を受けていない。受けている場合は12か月が過ぎている
- 導入したいツールが事務局に登録されている
- 交付決定より前に発注や購入をしていない
5つすべてに「はい」と言えるなら、申請の前提は整っています。言えない項目があれば、そこから片づけてください。
採択率と実際に採択されている企業
助成金と違い、補助金には審査があります。要件を満たしても採択されないことがあります。
中小企業庁の資料には、直近2か年の申請件数と採択件数が載っています。
| 枠 | 申請件数 | 採択件数 | 採択率 |
|---|---|---|---|
| 通常枠 | 23,672 / 25,140 | 8,936 / 16,540 | 37.7% / 65.8% |
| インボイス対応類型 | 56,029 / 46,394 | 25,900 / 33,438 | 46.2% / 72.1% |
| セキュリティ対策推進枠 | 730 / 225 | 360 / 192 | 49.3% / 85.3% |
通常枠は、年によっては申請の6割以上が採択に至っていません。要件を満たすことと採択されることは別だと考えてください。
採択されているのは小さい会社が多い
同じ資料に、採択された企業の従業員規模が載っています。以下は2か年の合計です。
| 従業員数 | 採択件数 | 割合 |
|---|---|---|
| 5名未満 | 37,240 | 43.6% |
| 5名から50名未満 | 40,588 | 47.5% |
| 50名から100名未満 | 4,329 | 5.1% |
| 100名以上 | 3,210 | 3.8% |
100名以上の企業は全体の3.8%です。中堅規模で申請する場合、社内にも取引先にも前例が少ない前提で進めることになります。
補助額は100万円未満が最も多い
| 補助額 | 採択件数 | 割合 |
|---|---|---|
| 100万円未満 | 28,296 | 33.1% |
| 100万円以上150万円未満 | 17,450 | 20.4% |
| 150万円以上300万円未満 | 14,568 | 17.1% |
| 300万円以上450万円未満 | 24,894 | 29.2% |
| 450万円 | 159 | 0.2% |
上限の450万円ちょうどで採択されたのは2か年で159件、全体の0.2%です。最初から上限を前提に計画を組まないでください。

150万円以上を申請するときの賃上げ要件
補助額が150万円以上、つまりプロセス数4つ以上で申請する場合、賃上げ計画の策定と従業員への表明が必須になります。
中小企業庁の資料に書かれている内容は次の2つです。
- 事業計画期間において、1人当たり給与支給総額を年平均成長率3%以上増加させること
- 事業場内最低賃金を、地域別最低賃金に30円以上上乗せした水準にすること
達成できないと返還になる
賃上げ目標には2つあり、未達のときの扱いはそれぞれ違います。期間内に効果報告をしなかった場合も返還の対象です。
事業場内最低賃金が未達の場合
この目標は効果報告時の直近月時点で、年度ごとに判定します。返還額は補助金の額を3年で割り、未達となった年以降の年数を掛けた金額です。
| 未達となった年 | 返還額(補助金450万円の場合) |
|---|---|
| 1年度目 | 450万円(全額) |
| 2年度目 | 300万円(3分の2) |
| 3年度目 | 150万円(3分の1) |
付加価値額の増加率が年平均1.5%に達しない場合は返還を求められません。天災など事業者の責任によらない理由がある場合も同じです。一度返還すると、翌年度以降の効果報告と返還は求められません。
1人当たり給与支給総額が未達の場合
こちらは年度ごとの按分がありません。事業計画終了時点で判定し、未達なら補助金の全部の返還を求められる場合があります。補助金450万円なら450万円です。
加点を取る方法
審査には加点項目があります。手間の小さいものから押さえてください。
- 中小機構の「省力化ナビ」を使い、解決策のPDFをダウンロードしておく。申請に使うGビズIDプライムを入力する必要があります
- デジタル化セカンドオピニオンの取り組みを実施しておく。確認者との面談を終えてから交付申請を出します。第3回の公募回から加点の対象です
- 賃上げ計画を従業員へ表明する。150万円未満の申請では加点項目になります
- 事業場内最低賃金を地域別最低賃金に上乗せする。150万円以上では50円以上、150万円未満では30円以上で加点されます。150万円以上の30円以上は加点ではなく申請の必須要件です
申請の流れ
この補助金は、自社だけでは申請できません。
事務局に登録されたIT導入支援事業者を通じて申請します。ツールを売るベンダーが申請のサポートも行う仕組みです。
| 順番 | やること |
|---|---|
| 1 | 導入したいツールと、それを扱うIT導入支援事業者を探す |
| 2 | GビズIDプライムを取得する。発行に日数がかかります |
| 3 | 省力化ナビなど加点項目に取り組む |
| 4 | IT導入支援事業者と一緒に交付申請を作成し提出する |
| 5 | 交付決定を待つ。ここまで契約と支払いはしない |
| 6 | 交付決定後にツールを契約、購入、支払いする |
| 7 | 実績報告を出し、補助金を受け取る |
| 8 | 定められた期間、事業実施効果を報告する |
2026年の通常枠は、交付申請期間が2026年3月30日からとなっています。受付のスケジュールは事務局のサイトで順次公表されます。
つまずきやすい点
1. 交付決定の前に発注してしまう
交付決定より前に購入したツールは対象外です。年度末に急いで契約したくなりますが、待ってください。
2. GビズIDの取得が間に合わない
GビズIDプライムは即日発行ではありません。締切から逆算して早めに申請してください。
3. 12か月ルールを見落とす
2025の通常枠で交付決定を受けていると、その日から12か月は2026の通常枠に申請できません。
4. 上限額を前提に計画を組む
450万円ちょうどで採択されたのは2か年で159件、年平均で約80件です。実際の分布は100万円未満が最も多くなっています。
5. 賃上げ要件を軽く見る
150万円以上では必須です。未達なら返還を求められます。3年間の人件費計画とセットで判断してください。
6. 一部のツールを途中で解約する
複数のツールを導入し、そのうち一部を解約する場合でも、補助事業の辞退とみなされることがあります。辞退の手続きが必要です。
助成金とどちらを使うか
AI関連で使える公的なお金は、目的で分かれます。
| デジタル化・AI導入補助金2026 | 人材開発支援助成金 | |
|---|---|---|
| 所管 | 中小企業庁 | 厚生労働省 |
| 対象 | AIを含むITツールの導入費用 | 社員への研修費用 |
| 性格 | 審査がある | 要件を満たせば原則支給 |
| 研修費 | 導入するソフトに紐づく研修は対象 | 対象 |
| 受け取り | 後払い | 後払い |
ツールを買うなら補助金、人を育てるなら助成金です。両方に該当する取り組みであれば、それぞれ別に申請します。
よくある質問
他の補助金と併用できますか
制度ごとに定めが異なるため、一律には言えません。
同じ経費を複数の補助金に出せるかは、それぞれの公募要領で確認が必要です。想定している構成のまま、IT導入支援事業者にも確認してください。
AIツールなら何でも対象になりますか
事務局に事前登録されたITツールの中から選ぶ必要があります。使いたい製品が登録されているかは、その製品を扱うIT導入支援事業者に確認してください。登録されていない製品は、どれだけ良いものでも対象になりません。
ChatGPTやGeminiの利用料は対象になりますか
事務局に登録されたITツールであるかどうかで決まります。一般向けの契約をそのまま補助対象にできるとは限りません。導入を検討している構成でIT導入支援事業者にご確認ください。
補助金はいつ振り込まれますか
交付決定、ツールの購入と支払い、実績報告を経てからの後払いです。申請してすぐに入るお金ではありません。ツール代金は一度自社で全額を負担します。
落ちたら再申請できますか
公募回が複数設けられているため、次の回に申請することは可能です。ただし通常枠は交付申請期間中に1法人1申請までのため、同じ期間内で重ねて出すことはできません。
従業員が5人ですが対象になりますか
対象です。むしろ採択件数の分布を見ると、5名未満と5名から50名未満の企業が大半を占めています。規模が小さいことは不利にはなりません。
補助金の申請を代行してもらえますか
IT導入支援事業者が申請のサポートを行う仕組みです。ただし申請の主体はあくまで事業者本人です。申請マイページのIDとパスワードは、IT導入支援事業者を含む第三者に渡さないよう公募要領で定められています。
まとめ:今週できること
この補助金は上限額だけを見て判断すると、あとで資金繰りと返還条件に引っかかります。
今週できることは2つです。
- 自社の業種と資本金、従業員数を対象要件の表と照らし合わせる
- 過去にIT導入補助金の交付決定を受けていないか、受けていればその日付を確認する
この2つが確認できれば、そもそも申請できるかどうかが決まります。導入するツールを選ぶのはそのあとです。
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